冬の花

「その態度、気に入らないんだけど?」


鳴海千歳のその声が楽しそうで、
なんとなく敗北を感じた。


「なんで私を呼んだんですか?
だって、鳴海さんなら私なんかをこんな風に相手にしなくても、
モテるだろうし」


思っていた疑問を、口にした。


だから、もしかしたら彼に何もされないと私は何処かで思っていた。


木元さんのように、純粋に鳴海千歳が私を気に入ったとか、仲良くなりたいだけだとか、そんな事は流石に思わないけど。


何か、私を呼んだ理由があるんじゃないかと…。


「なんでって…。
たまたま君だっただけ。
最近仕事ばっかりでむしゃくしゃしてて。
君の言うように、モテない事もないけど、
今は軽く遊べる相手も居ないし、そこまでのプロセスが色々と面倒だし。
プロデューサーの橋田さん達が君の演技を気に入って使いたそうだったから、
君にしただけ。
あ、後、別にその為にわざわざこの部屋用意したわけじゃないから。
この部屋仕事の為にここ一年くらい使ってて。
家より、仕事はホテルに籠った方が捗るから…そんな感じで、ここ最近ずーと家帰ってなくて…」


鳴海千歳は、最後の方は独り言のようにそう言うと、
疲れた、と近くにあるソファーに腰を下ろした。


そして、欠伸をすると、
私を見上げるように見て来る。


「で、どうするの?
役欲しい?」


そう言われ、私は頷く事が出来ない。


ここに来る迄は、枕くらいって思っていた。


女優として売れて、私の存在をずっと阿部さんに見ていて欲しいから。


だから、どんな事をしても売れたいって思っているのに。


なんで、足が震えているのだろうか?


鳴海千歳はとても魅力的な男性だと思うから、
本当にただ食事するだけくらいなら私も多少は嬉しい気持ちがあったかもしれないけど。