冬の花

「いきなりベッドに行く?」


背後から耳元でそう声を掛けられて、
悲鳴も出ないくらいに驚いた。


「あれ?
そのつもりで来たんじゃないの?」



そう言って笑っている。


私はゆっくりと、鳴海千歳の方を振り返った。


私を見下しているように、その顔は見える。



「そうですよ…。
鳴海千歳さんの相手をして気に入って貰う為に来ました。
いい役が欲しいから」


そう言って、私も鳴海千歳に笑い返した。


「気に入って貰いたいって態度に見えないけど」


鳴海千歳は、ゆっくりと私の顔に自分の顔を近付けて来る。


唇と唇が触れそうになる瞬間に、
私は思わず下を向いてしまった。


覚悟はしていたのに、いざとなったら出来ない。


何故か、阿部さんの顔を思い出してしまう。