事を終えると、お互い衣服を整えた。


私はキスさえも初めてで、終始どうしていいか分からず、阿部さんに身を任せる事しか出来なかった。


幸い、初めての痛みも、歯を食い縛れば耐えれるくらいだった。


車内に流れる重い沈黙を破るように、
阿部さんが口を開いた。


「俺達、もう会わないでいよう」


「えっ…」


何故、と言葉が出て来ない。


「これからあかりちゃんを見掛けても、
もう話し掛けないから。
俺達はもう関わらない方がいい。

今日の事を、誰にも知られない為に」


こちらを見ずに、阿部さんはフロントガラスを見ている。


雪で真っ白で、何も見えないのに。


「…そうですね」


きっと、それがいいのだと思う。


阿部さんの言うように、私達はもう関わらない方がいい。


私達が、父親を殺して湖に捨てたのだと誰にも知られないように。