「そんな生活が二年くらい経った時、母親がその男と別れて…」
「じゃあ、そこからはもうそんな目に遭わなくて済んだんですか?」
私がそう問うと、阿部さんは首を横に振った。
「またすぐに母親に新しい男が出来て、また同じ事の繰り返し。
またその男と別れても、また新しい男が出来て、また一緒で…。
一生こんな事が続くのか、って子供ながらに絶望していた」
「そんな…」
子供の時の阿部さんのその姿を想像し、
同じように私も絶望してしまう。
なんで、そんな思いをしないといけないのか、
理不尽過ぎて。
「だから、母親を殺した。
こいつが居る限り、ずっとこの連鎖が続くのかって」
そう語る阿部さんの目には、
その時抱いた殺意が浮かんでいる。
その気持ちが分かると、私は頷いた。
私の置かれている状況よりも、阿部さんの方が辛いと思うから、
全部がその辛さを理解は出来ないけど。
親のせいで、自分ではどうにもならない不幸の中にいる気持ちは分かる。
そこから、抜け出したいって。



