冬の花

阿部さんが物心ついた頃から、
母親と二人古く狭いアパートで住んでいたらしい。


幼い頃、母親に父親の事を聞くと、
誰が父親なのか分からないと、笑って答えたらしい。


阿部さんの母親は水商売をしていたらしく、
夜だけじゃなく殆ど家にも居なくて、
家に居る時はいつも男性を家に連れ込んでいたらしい。


それは、彼氏なのかお客さんなのか分からないけど。


阿部さんが小学生になる頃に、
母親が初めて彼氏だと一人の男性を阿部さんに紹介した。


そして、その男性も一緒に阿部さん親子と暮らすようになった。


「そっから、本当にニュースとかで見るような虐待が始まって…。
無職の内縁の夫に暴力振るわれて…」


その言葉で、私自身も父親に殴られた痛みを思い出し、苦しくなる。


その苦しみ、それ以上の苦しみが阿部さんの身にもおきていたのだと、
涙が溢れて来る。


「学校もさ…最悪で。
俺、幼稚園とかも行かせて貰ってなくて、
小さな頃も昼間家から出るなって言われてたし、どこか遊びに母親が連れてってくれるわけでもなくて。
家でただ一日中テレビ見てただけで。
だからか、小学生になっても周りと比べて何も自分で出来なくて、
周りの友達とどう遊んでいいのかも分からなくて…。
次第に浮いて、それがイジメになって…。
家もそんな感じだから、本当に最悪で…。
子供だったから、ただ泣くしか出来なくて、あの頃はずっと泣いていたような気がする。
体も心も痛くて痛くて…」


阿部さんはそう言うと、口を閉ざした。


もうこれ以上、話したくないのだろう。


だけど、再びゆっくりと口を開いた。