「そうなんだ…。
こんな可愛いあかりちゃんをあんな男と二人暮らし続けさせるなんて…。
本当に、信じられない」


坂本さんも私を心配して同情してくれているのだろうけど、
結局は、他人事なのだと思う。


母親の親戚達とさほど変わらない。


「高校出たら働いてあんな家出るから大丈夫ですよ。
後一年ちょっとの辛抱です」


私はそう言って、財布から千円札を一枚取り出し、坂本さんに渡した。


「頑張りなよ。あかりちゃんなら大丈夫。
おじちゃんも応援してるから」


「はい」


そう言って笑ってみせるけど、
心の中では酷く冷めていた。


そんな励ましの言葉よりも、このビールの代金を一円でも安くしてくれたらいいのに、って。


このビールのお金は、私が働いて稼いだお金…。


この人のように父親の事で私に同情してくれる人はこの村に沢山居て、
それと同じくらいに、父親とまとめて私を避けている人達も沢山いる。


佑樹達家族のように。


最初は坂本さんのように私を心配してくれる人達の言葉が嬉しかったけど、
最近は、ほっておいて欲しい気持ちの方が強かった。


優しい言葉や同情なんかじゃ、私は全然救われないと気付いたから。