鳴海千歳の顔が私の顔に近付き、
ゆっくりと唇が重なった。

抵抗しないと、と思っているのに、
どうしてもそれが出来ない。

この人と、離れたくないと思った。

本当にこの人が好きなのか、
それとも、色々と有りすぎて心が疲れていて、
誰かにすがりつきたくなっただけなのか分からないけど。

キスが深くなって行き、
そのまま近くのソファーに押し倒された。

私は、今だけは何もかも忘れてしまいたいと、
目を閉じた。

再び、鳴海千歳の唇が私の唇に重なった。

鳴海千歳に抱かれている間、
何もかも忘れられた。

父親の事も佑樹の事も。

そして、阿部さんの事も。

鳴海千歳に、好きだよ、と何度も耳元で言われる度に、胸が苦しかった。

この人を、これ以上好きになってはいけないのだと。