冬の花

「君と初めて話したあのホテルでの事、覚える?」

そう訊かれて、あの時この人と喧嘩になった事を頭に浮かべた。

「覚えてますよ、私鳴海さんに失礼な事ばかり言って」

お互いコートを着たままなのに、
この人から温もりを感じた。

私は鳴海千歳の肩に顔を埋めたまま、
そっと目を閉じた。

「君の言う通りだった。
俺の書く物は既視感ある話ばかりで、
言われたように、きっといつか飽きられてしまうだろう」

そう言われ、私は返事が返せなかった。

今さら、あの時の言葉は思ってもない事ばかり言ったとか、
そんな白々しい事も言えない。

かと言って、改めて、この人を傷付けるような事も言いたくない。

「あの時、君がとても誉めてくれた俺のデビュー作。
《君の涙の色》は…」

あの作品は、盗作、なんだ。

そう呟くように、鳴海千歳は口にした。

私は閉じていた目を開き、
鳴海千歳の顔を見上げた。

鳴海千歳は、私の方を見ずに話し始めた。