冬の花

スマホを耳から離して、立ちすくむ私に、
そっと鳴海千歳が近付いて来る。

「どうしたの?」

そう優しく声を掛けてくれた。

「自首を勧められた。
…そっか、確かに自首した方が罪は軽くなるかもしれない」

だから、阿部さんも。

そう思おうとするけど、
電話での阿部さんのあの態度…。

もう私の事なんかどうでもいいのかもしれない。

「自首?
あの刑事さん、てっきり君を逮捕して大きな手柄を欲しがっていたのかと思ったけど。
よく分からないね」

そう言って笑っている鳴海千歳を見ていると、
なんだか悔しくて、涙が溢れて来る。

「いつか鳴海さんが望んだようになりましたね?
私はこの業界から消える。
さっきあなたが言っていたように、
人生そのものも…」

何処かで八つ当たりだと思いながらも、
目の前のこの人を睨み付けてしまう。


「俺は、君の破滅を望んでいたわけじゃない。
ただ、ずっと罪を抱えて苦しいんじゃないかと思うから。
助けてあげたかったのかもしれない」

「助ける?
私を警察に突き出す事が?
私が苦しんでいるって?
分かったような事言うんですね?」

その言葉と同時に鳴海千歳に強く抱きしめられていて、
反射的に抵抗するが、直ぐに力が抜けた。

なんだか、とても安心してしまって、
私からもその背中に腕を回した。