あの村…あの湖…。

この6年間、一度もあの場所へ帰ろうと思う事なんて無かった。

むしろ、避けていた。

けど、父親の遺体が見付かり、状況が変わった。

父親が見付かったのは…。

佑樹があの時言っていたように、
佑樹の父親はあの湖一体の土地をM不動産に売っていた。

そして、M不動産はそこに温泉付きの大きな老人ホームを作ろうと、大手のゼネコンに依頼して工事を始めていたらしい。

それで知ったが、あの一体には温泉が地中で湧いていたらしく、
その一部があの湖の底にも少し湧き出していたらしい。

それが、氷点下でも凍らなかったあの湖の秘密だった。

一部の人間はそれを以前から知っていたみたいだけど。

その温泉付きの施設をあの場所に作る為に、
一度あの湖の水を全て抜いたらしい…。

私の父親の遺体がその場所から見付かり、
その工事は現在一時中断されていると聞いたけど、
どうなっているのかこの目で確認したい。

それに、私の父親の殺害現場となった、
私の住んでいたあの家…。

本当にもう燃えてないのだろうか?


そう思うと、居てもたってもいられなくなった。