冬の花

「心配しなくても、ちゃんと薬は効いてるから。
てっきり毒でも入ってるのかと思ってたけど、睡眠薬系?
俺、酒は強い体質だからこれくらい平気なはずなのに、
さっきからすげー、頭がボーとする。
手にも力入らなくなって来た」

その言葉に、心臓が止まるんじゃないかってくらいに驚いた。

「佑樹…分かってて…」

飲んだワインに何かある事を、
佑樹は分かっていて…。

いつから?初めから…。

佑樹は自分が殺されるって事も、
分かっているの?

「この部屋…俺達以外にも誰か居るんだろ?
静かにしてても、気配で分かる…」

佑樹は、目線をリビングの横の寝室に向けた。

その扉が開き、阿部さんの姿が現れた。

佑樹がこの部屋に来る一時間程前に、
阿部さんはやって来た。

一週間前に、佑樹をどうやって殺害するかを話し、
それを決行する為に。

「お前にあの日見た事を話せば、
俺も殺される事くらい、
予想付いてたよ…。
夕べ、今日のこの誘いを受けた時に、きっとそうだろうなって…」

何もかも分かっていて、佑樹はこの部屋へとやって来た。

ならば、これは逆に佑樹の罠か何かなのだろうか?

「睡眠薬飲ませたのは、
ちょっとでも俺に恐怖を与えない為に、配慮してくれたの?」

佑樹は空になったワインボトルを手に持つが、
力が入らないのか、それは手から転がり落ち、
床に鈍い音を立てて落ちた。