佑樹に言われ、彼をマンションの自分の部屋へと招いた。

「けっこう広い部屋だな」

佑樹は、子供のように私の住まいを見回している。

大学卒業を機に、以前よりも広い1LDKに引っ越した。

以前の部屋は大学に近く便利で住んでいたが、
卒業した今はもう大学に近くなくてもいい。

仕事する上で便利な場所でセキュリティの良いマンションに引っ越した。

「シャワー浴びて来いよ。
大体分かるだろう?」

佑樹のその言葉に、首を横に振った。

「佑樹、私の事なんて、女として見てなかったじゃない?
なのに、なんで?」

昔の佑樹を思い出して、
私にそう言う事を求めて来る事を不思議に思った。

「確かに昔のお前はやぼったくて、
色気も何も無かったけど。
女優になって、垢抜けていい女になったって認めてやるよ」

佑樹はゆっくりと私に近付いて来る。

私は逃げるように、後ずさりしてしまう。

だけど、背中が壁に当たり、
これ以上は逃げられない。

佑樹が私の顔を、ギュッと鷲掴んだ。

「顔だけは、昔から良かったけどな」

そのまま、佑樹は私にキスをした。


唇が触れた瞬間、力一杯抵抗して、
なんとか佑樹から逃れた。

「あのお巡り、今はK県警で刑事やってるんだって」

その言葉に、えっ?と問いかけた。

「俺の従兄弟がK県警の捜査一課に居るから。
あの人、俺の従兄弟とちょっと話す事があったみたいで、あの村の交番に居たって話になったって。
阿部だっけ?確か名前」

阿部さん、もうあの村には居ないんだ…。

なんだか、それが少し寂しくなった。

だけど、そうやって元気にしているのだと分かって、
良かった。

「警察官のあの彼を犯罪者にしたくないなら、
お前は俺の奴隷になれよ」

髪をギュッと掴まれて、痛い、と睨み付けてしまうけど、
すぐにその目を伏せた。

私が佑樹の言う事さえ聞いていれば、
阿部さんを守れる。