冬の花

「夜トイレ行く時とか、
廊下の窓から佑樹の部屋が見えるから」

「そうだよな。
向かいに住んでいたら、色々見てしまうよな」

「あ、うん」

なんだか、空気が嫌な雰囲気になって来たのを感じる。

「俺が小学生の頃、庭でよく父親に怒鳴られているのも、あかり見た事あるよな?」


見ていた事を知られていたんだ。

「別にそれも覗いてたとかじゃなくて、
ただ家から出る時とかに見えて…」

キュー、と大きな音がするくらいに、
佑樹は強くブレーキを踏んだ。

思わず、体が前に揺れた。

「悪い。
信号赤なのちゃんと見てなかった」

佑樹の言うように、信号は赤。

「俺は兄貴と比べたら出来が良くないから。
父親に怒られる事なんてしょっちゅうで、
度々、庭で正座させられて怒鳴られて。
いつもは甘い母親も、そんな時は助けてくれないし」

「うん…」

度々、私はそれを目撃していたから知っている。

佑樹の父親の怒鳴り声も聞こえて来ていたから、
佑樹が優秀な兄と比べられて怒られている事も知っていた。

佑樹には7歳年上の兄が居て、
東大に現役で合格してしまうくらいに優秀。

佑樹も私の知る限りでは成績は良いはずだけど、
きっと、佑樹のお兄さんのレベルには全然届かないのだろう。

佑樹のお兄さんの事は、
向かいに住んでいてもあまりどんな人なのかはよく知らないのだけど、
ただ、とても優秀だと言う事は、
私だけじゃなくあの村中の人達はよく知っている。