伽藍に訊こうと思った。

こーちゃんの記憶がない理由を。

でも、こーちゃんのことで伽藍を頼るのは嫌だった。

俺よりこーちゃんのことを知っているだろう伽藍への、ただの負け惜しみだけど。

だから裏から手を回すことにした。

時さんを通じて湖蘭さんに連絡を取った。時間が空いているとき、時さんも一緒で構わないのでお時間いただけませんか。こーちゃんのことでお聞きしたいことがあります、と。

時さんからはその日のうちに返信があった。指定された時間は、いつもなら生徒会室にいる時間。

多忙な若女将の湖蘭さんに、直近でとれる時間はそれが精いっぱいらしい。

でも早めに訊いてきたかったらそれに了承の返事を送った。

生徒会の方は今まで休みなく出ていたから、九条先生に休みますって話したら驚かれたけど、「うん、たまにはそういうのも必要」と快諾してくれた。

こーちゃんや幹には誤魔化しておけばいい。

――そしてその日、俺は『湖風』を訪れていた。

湖蘭さんから、「前に湖月が連れて来た方の家に寄ってほしい」って言われたからその通りにすると、この前玄関に出てきた女性がまた迎えてくれた。