好敵手~真実探求ハムカイザー

 緑茶と真、実の三人は食事を終えると車に乗り込んだ。

「オッサンとコッサンはビールか焼酎でも呑むかと思ったら何も呑まないんだな。」
「これから一仕事あるんでね。」
「僕もありますからね。」
 緑茶の言葉に真と実はそう答え、真はポツリと言った。
「それと僕らは焼酎は呑まないんです。」
「どうしてなんだ。僕も呑まないけどな。」
 緑茶が尋ねると真が喋り始めた。
曾祖父(おおじい)の汚名を晴らすまで、ご先祖様の汚名を晴らすまでは焼酎は呑まないことにしています。」
「どうやって汚名を晴らすつもりだい。」
「やり方は今まで通りですよ。不平不満を持つ者、要は心に陰がある人間の影に入り心の陰の輪郭を影と同調させる。それだけです。節目はご当地ヒーローが御先祖様の墓の前で土下座した時です。その夜は浴びるくらいに呑みます。で、先生が呑まない理由(わけ)は。」
「そうか、君たちは寛容だな。羨ましいよ。僕が焼酎を呑まないのは周りがウザイから。」
 真の話を聞いた緑茶はそう言った。
「意味が解らないんですけど。」
 実が言うと今度は緑茶が話し始めた。
「僕は東京にいる時は宮崎の焼酎を周りの人にも勧めてたんだよ。田舎者(いなかもん)の酒とか馬鹿にされてもね。でも宮崎に帰ってきてから気が変わった。車で来ているのに無理やり呑まされて、翌日の仕事に影響が出たり酒臭いと言われたりだ。その時に〈二度と焼酎は呑むか。〉と思ったよ。」
「今で言うパワハラですね。」
「だから焼酎は一生飲まない。次に生まれ変わった時に宮崎県人だったら呑むけどね。」
 三人は焼酎を話題にして盛り上がった。
「さすが先生だ。焼酎一つにしても筋が通ってると言うか頑固と言うか。」
 真がそう言うと実は
「頭が固いと言うか融通が利かないと言うか。とにかく言っても聞かないタイプですね。」
と言う。真は
「それで先生は何を呑んでるんですか。」
と尋ねた。
「家ではジンをストレートで呑む。勿論、チビチビと。」
「それじゃ外では。」
 実が尋ねると、
「ビール以外はマティーニが旨い店にしか行かない。最初はドライ、二杯目はエクストラ、最後はショットグラスだ。」
「でもマティーニって大元のボトルは大体決まってますよね。」
 実が突っ込むと。
「ジンが冷凍庫で冷やしてあることが条件かな。」
 緑茶はそう言い、それを聞いた実は
「やっぱ先生に宮崎は似合ってません。」
と笑う。すると会話を聞いていた真が口を挟んだ。
「最後の一杯が気になったんですけど三杯目をマティーニにしないでジンにするの何かあるんですか。」
「ベルモットの代わりに懐かしい記憶を辿って自分の中でマティーニに仕上げる。」
「例えば、今だったら。」
「峰子さんかな。」
「先生の心には隙がないわけですね。だから影に入っても操ることができない。操心術が効かない訳です。それじゃあ実、行くか。」
 真と実は緑茶の車の後部座席でハムカイザー、ハムカウジーと化した。二人は徐々に淡い影になり消えた。