今日は待ちに待った花火大会当日。

 ここのところ、日に日に暑くなってきていたから、陽菜の体調が心配だったけど、昨日の終業式では元気だったし、今日も問題ないと叶太くんから連絡があった。

「ちゃんとご挨拶してね」

「うん。送ってくれてありがとう!」

 川沿いのホテルのエントランスまでは、お母さんの車で来た。

「手土産持った?」

「大丈夫、ちゃんと持ったよ」

 お母さんお勧めの和菓子屋さんの袋を持ち上げて見せる。
 いつまで経っても子ども扱い。でも、自分がそう気の利くタイプだとも思えないので、素直に従っておく。

 だって、陽菜のおじいさんとおばあさんって、つまり牧村総合病院の院長先生と院長婦人でしょう? 陽菜の家のお隣の大きな和風のお屋敷や幾つも並ぶ蔵、池まである立派な日本庭園を見ても、ちょっと別世界の方だなって思うもの。

「帰りは十時半でいいのね?」

 交通規制が終わるのが、十時だそうで。直後は混むからと、その三十分後がお迎えの時間。
 陽菜からは泊って行けば良いのにと誘われたけど、さすがにそれは申し訳なくてお断りした。

「うん。遅くにごめんね」

「年頃の娘を一人で帰って来させる方が心配だもの」

 お母さんはほがらかに笑う。
 子ども扱いだけど、大事にされてるなーと思う。

 ホント、ありがたい!

「楽しんでいらっしゃいね」

「はーい。行ってきまーす」


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