「川の上で花火上げるだろ?」

「うん」

「あの川沿いにあるホテルの、リバービューの部屋から、花火がよく見えるんだ」

「へえ~」

「で、ハルんちは毎年、花火の日はそこの部屋借りてて、行ける人だけ見に行ってるの。だから、志穂もそれで良けりゃ来いよ」

「なんかさー、陽菜誘ったのに叶太くんから来いって言われるの、腑に落ちないんだけど……」

 しーちゃんは不満げに口をとがらせる。

 ごめんね、上手に説明できなくて。

「しょうがないじゃん。オレ、その日は毎年、ハルと過ごすんだから」

 そう。カナは、『毎年、花火大会に行く』ではなく、『毎年、わたしと過ごす』んだ。

 花火見学はおじいちゃんとおばあちゃんが主催の恒例行事。

 だけど、時期的に私は行けない年も多い。
 カナは、わたしが行けるなら一緒に見に行くし、行けない時には一緒に留守番をしてくれる。

 去年もカナは、「オレは花火よりハルが良いから、みんなは見に行ってきてよ」って言って、わたしとお留守番。

 おじいちゃんもおばあちゃんも花火を楽しみにしているから、カナにそう言ってもらえると、わたしもありがたい。

 昔はお兄ちゃんも一緒だったけど、大学に入ってからは試験と重なるから、来られないし。
 パパやママは仕事がない年は参加するけど、今年は2人ともムリだと言っていた。

 だから、当日、体調がよかったら、今年はおじいちゃん、おばあちゃん、カナ、そしてわたしの四人で行くことになる。

 部屋は広いし、しーちゃんが一緒でもなんの問題もない。