まだ夕方の4時過ぎ。
 ホテルを一歩出るとムワッとした熱気に包まれた。これは、ハルには長くは無理だ。ピンポイントでやりたいことやって、サッサと戻るが良し、だ。

「ハル、何見たい?」

 オレがハルの手を取ると、志穂がまるでオレに対抗するかのようにハルの反対の手を取った。

「ねえ、陽菜、何か食べる?」

 ハルが困ったように、小首を傾げる。
 オレは、志穂対策に羽鳥先輩を呼ばなかったのを若干後悔。
 先輩がいれば、ダブルデートの体裁が整ったのに。
 ハルが歩きにくそうだったので、仕方なく、オレはハルの手を離した。

「しーちゃん、6時から、少し早めのお夕飯なの」

「あれ? 露店で買い食いじゃないの?」

「うん。……ごめんね。言ってなかったね。……えっと、和食なんだけど大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。何でも食べられるよ」

 志穂は元気に答えた。

「でも、どこで食べるの? 部屋でお弁当?」

「ううん。ホテルの中のレストラン。美味しいよ?」

「ふふ。じゃあ、楽しみにしているね」

「うん」

 楽しそうに志穂と話すハルの髪飾りが風に揺れる。
 その笑顔が可愛くて、思わず手に持ったカメラで一枚。

 うん。やっぱり、コンデジやスマホに比べたら雲泥の差。写りがいい。
 ハルの可愛らしさがモニターに凝縮されている。

 これ、オレも買おうかな?

「じゃあさ、ご飯食べなくて良いんだったら、時間あるから射的とか金魚すくいとかして遊ぼっか」

 志穂は嬉しそうにハルの手を握り直して、露店を物色し始めた。

 花火開始にはまだ時間があるけど、川沿いの道路はもう人混みができている。
 明かりはまだ灯っていないけど提灯が揺れ、露店も色々出ていて、浴衣姿の人も多く、お祭り気分満載だ。