「じゃあ、そろそろ行って来るね」

 浴衣を着た志穂も交えて、リビングやベランダで何枚も写真を撮った後、オレたちはホテルの部屋を出た。

「暑いから、疲れたらすぐ戻るのよ? 無理しないように気を付けて楽しんでいらっしゃいね」

 ばあちゃんがハルに声をかける。

「はぁい」

 ハルが笑顔で答えている。
 じいちゃんはオレの方へ来ると、

「カナくん、頼んだよ」

 と一言。

「まかせて!」

 と胸を張ると、カメラを手渡された。

 あれ?

「今年買ったミラーレス。これなら、軽いし簡単だから」

 じいちゃんの趣味はハルの写真を撮ることだ。写真が趣味ではなく、ハルを撮るのが、ってところがポイント。

「すぐそこだし、邪魔にはならないだろう?」

 ハルをよろしく頼むよ、じゃなく、ハルが親友と露店を楽しむ姿をカメラに収めてきてねって意味の「頼むよ」か。

 まあ確かに、わざわざよろしくされなくてもハルのことはオレ、心底しっかり気を付けるしね。

 じいちゃんの愛嬌ある笑顔に思わず笑うが、ハルの浴衣姿は格別だ。自然な姿をカメラに収めたい気持ちは分かったので、

「了解。後でデータちょうだいね」

 と快諾。

「もちろん」

 じいちゃんも笑顔で答えてくれた。


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