「可愛いけど、可愛い趣味してんね」


言わないつもりが、ついて出ちゃったよ。

うわ、笑ってる。


「うん、クマさんあげる」



は?


あげる?



好きなんじゃないの?


趣味のクマを褒めたらあげちゃうような簡単なやつなの?




「いや、いいよ。

クマさん、好きなら持ってなよ」




別に欲しくて見ていた訳じゃない。

車の中にドレス着たクマが居たのが不思議だっただけ。


なんか、あー言うの見た事あるんだよな。

結婚式の電報みたいな感じの。



「ーーーーそのクマさんは、持ってると幸せになれるよ」





幸せーー?


確かにドレスを着たクマとか、恋愛運が伸びそうな感じ。


私は、そのクマをじー、と見た。




「やっぱりいいよ。
結婚式のドレス着たクマとか、もしかして大切なモノなんじゃないの?
彼女とかーーーー「居ないよ。つか、死んじゃったからっ」







えっーーーー?




死んじゃった?




彼女が?




酷な事を聞いてしまった。



その時の表情が、切なげでーー私はクマを抱き寄せた。




「やっぱり、クマちょうだい!」





きっと、このクマは彼にとって大切なモノ。


だけどーーーー



無くしたい嫌な過去のひとつに違いない。


助けてくれたお礼かな。

私は、クマを抱き締めた。