ーーーー花菜sideーーーー



そうだ。
私、あの交差点でーー。

急ぎ過ぎた。


早く帰って陽太の笑い顔が見たかった。

一分一秒だって無駄に出来なかった。

早く帰って陽太と、笑い合いたい。
いつも、どうにも素直に慣れない私はーー可愛く甘えられない。



帰ったら陽太に伝えたかった。

卒業間近のあの告白。


本当は、ものすごく嬉しかったこと。

あの日、陽太に好きと伝えるつもりだったこと。



いつも、陽太から言わせてーー不器用な陽太が頑張ってくれるからそれに甘えて、言えなかったのは、臆病な私。





帰ったら1番に、"好き"を伝えたいってーー雨ん中、本当に土砂降りの交差点を横断中ーー。


傘で見えなかったけど、猛スピードのトラックが突っ込んできた。


身体を起こして気づいたのは、透明な私。



私はさぁ、ただの魂だけになっていた。