よろしくってなんだ。


幼なじみの延長か、って思った。
もう、幼なじみは嫌だって告白したのにーー勇気を出したのに、気の利いたことが言えない。


だけどーー花菜が笑ったから
その笑顔に釣られて、笑った。



花菜はいつだって俺をわかってる。







「母さん。
俺さ、花菜に会いたい。
会ってちゃんと自分の言葉で、伝えたいーー。


伝えたい言葉があるんだよーー」







母さんは、ただ黙って掴んでいた手を離した。








背中を向けた母さんの背中。






「行きなさい、陽太。




花菜ちゃんによろしくねっ」





母さんの背中は、震えていた。


きっと、泣いてるーー。



父さんーー。


母さんを泣かしてごめんなさい。









花菜に会いに行ってきますーー。







俺は静かに、実家を出た。











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蝉の声が、一際大きく鳴いた。

暑さは増すばかりだけどーー、ねえ、お父さん。



どうか、陽太を守って下さいね。

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