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約束場所は学校の近くのコンビニだったけれど、あたしは一旦ひと気のない公園に入った。


小さくて雑草が生えっぱなしのこの公園を使う子供はいない。


近く取り壊されて空き地になるという噂も出ている。


公園内に入ったあたしは建物の陰に隠れてスマホを取り出した。


いよいよ桜翔太くんを出現させるとなると、途端に緊張してきてしまった。


「大丈夫。出てきたって、本物じゃないんだから」


自分に言い聞かせるために声に出してそう言うと、少しだけ悲しい気持ちになった。


いくらアプリで出現させてもそれは実際の桜翔太くんじゃない。


アプリ使用者なら誰でも手に入れることのできる程度のものでしかない。


そんな現実を突きつけられた気分になった。


あたしは沈み込みそうになる気持ちを奮い立たせるため、左右にブンブンと首を振った。


せっかくなんだから楽しまなきゃ損だ!


「よし、出現させるよ!」


あたしはそう言い、アプリを起動したのだった。