「ハルキくん、もう、泳がないの?」 数日に1回、わたしは問う。そのたび彼は動揺を表すように肩を動かし、 「泳がないよ」 それから水を飲む。 ハルキくんは。 1度怪我をしてから、泳いだ試しがない。 怪我をして溺れてから、泳いだ試しが。 ハルキくんのお母さんが泣き叫んでいたことは覚えているけれど、ハルキくんが泣いていた記憶は──。