夏が好きだった。 

暑くても、アイスは食べれるし、夏の夜に歩くことも嫌いじゃなかった。


夏が嫌いだと、隣で眉をひそめるきみの首筋に冷えたペットボトルを当てて脅かすのも好きだった。




きっと、忘れられないんだ。


夏を嫌っていたきみを。

夏の夜、このべたべたした空気の中に一人取り残されて、今までで一番の後悔をしていることを。



それはもう、どうにもならないことを。





「いまさら、だよな」


呟いた言葉は夏に紛れることなくこころのなかに溶けずに残った。