呪い本14ページ 魔破りの目

「え?」

体のあちこちが痛んで、胸がぎゅっと縮む。息が苦しくて、何が起きたのかわからなかった。

「じゃあ私は先に片付けとくね」

執印さんは私と馬服くんを二人きりにして出て行った。助けは望めない、自力で逃げられない……。
上から影が落ちたと思ったら、首のすぐ横に刀を突きつけられた。

「執印と二人でみんなを殺そうって約束してたんだ。気付かなかった?僕も気付かなかったよ、和巳さんも呪いをかけていたなんてね」

信じられないことに、嬉しそうな声で言った。

「なんでみんなを殺したと思う?みんな僕の見た目を馬鹿にしたから。太ってるから何を言ってもいいと思って、雑に扱ったり好き勝手に言った。一緒に並んでいても僕だけ一段低いみたいだった。刀で無残な死体にしたかったんだ」

馬服くんはいつも笑っていて気付かなかった。傷付いていることに気付かなかった。

「和巳さん、何か言いたいことはある?」

馬服くんが刀を捻る。

「ごめんね」

こんな言葉じゃ足りないけど、これしか言えない。

「馬服くんは優しくて、私が悲しいとき絶対に励ましてくれたのに。涙が吹き飛ぶよう笑わせてくれたり、足が遅くて落ち込んでたら、みんな仕方ないっていうのに。馬服くんは見捨てないようにって、正しい走り方を教えてくれた」

仕方ないのかなって、自分でも決めつけかけたのに。

「それでも緊張して思った通りに体が動かなかったら、私がゆっくりなのは時間の流れが他の人と違っていて、その分しっかりと周りを見ている。体が強張るのは何事にも全力を尽くしている証拠って言ってくれた。それなのに、追い詰められるまで何もできなくて、ごめん……!」

遅い涙が溢れてきて、手遅れの罪悪感に締め付けられる。
ゆっくりと見つめているつもりでも、大事なことには全然気付かなかった。大事なことを見落とし、怖いものから目を逸らす、私は臆病者。


……馬服くんが刀を後ろに捨てた。

「見た目じゃなくて性格について話してくれるなんて」

痛む体で力を振り絞り、馬服くんの方を向く。

「みんなみたいに馬鹿にされてるんじゃって思ってた」

「馬鹿になんて……逆に好きだよ」

うっかりとんでもないことを言ってしまい、慌てて口を覆う。誤魔化そうとしたけど、それより早く嬉しいと言ってもらえた。