グイ、と、両肩を掴まれた。

そのまま右手が、躊躇いがちに頬に運ばれていく。

恐る恐る見上げた視線が、まるでそうなるよう計算されていたかのようにまっすぐ重なって、息の仕方を一瞬忘れた。


───焦げて、しまいそうだ。



「俺がなんで、こんな時間まで残ってたか、分かりませんか?」


「……わ、分かるわけないよそんなの」


「じゃあ分かってください。」


「え…」



ぽん、と投げられた、30センチくらいの高さのラッピング袋。白地の袋にピンクのリボンなんて、明らかに女の子用の包装だ。

何、まさかここに来て実は彼女いるんです宣言?う、嘘だろなんて無情な男なんだコイツ……。


顔を引きつらせながら冷めた目で彼を睨むと、変な誤解すんのやめてもらえますか?なんて言葉が返ってきた。最近薄々思ってたけど、彼にはエスパーの力でもあるんだろうか。



「……え、お、お菓子……?」



もうどうにでもなれ、と勢い任せに袋を開けてみたら、純粋に驚いてしまった。あの可愛らしい容貌とはあまりにアンバランスなポテチとかポテチとかポテチとか、あとはポテチとかが大量に入っていたのだから。



「というかこれはもはやポチ袋ならぬポテチ袋……」


「だって先輩の好きな物、これしか知らないんですもん」


「いや、そんな人を三度の飯よりポテチが好きな女みたいに言わなくても……って、え!?」


「……プレゼント、という名のポテチです」



バツが悪そうに視線を逸らした彼は、少しだけ暑そうな耳元を隠しながら呟いた。



「え、なんで、だって、ええ」


「今日誕生日って聞いたから、絶対一番に祝おうって思ったのに結局会えないまま放課後だし、HR終わった瞬間教室飛び出したのにどこ探しても見つかんなくて、もう諦めようかと思って戻ってみたらなんか俺の席座ってるし。……ほんとこっちの方がサプライズだっつの」


「えええええええ」


「………嬉しく、なかった?」



そろりと向けられた瞳が、やけに熱っぽくて、思わず期待してしまいそうになる。

だって、こんなの。嫌でも思ってしまうじゃないか。そういうことなんじゃないか、って。


───本気、なんじゃないかって。