にこやかに答える彼は、エドモンド・ハーリッツ。ハーリッツ子爵家の当主であり、レミリアの夫だ。

 祖国では多くの男性から求婚されていた、美人で華やかなレミリアが、心優しいが地味で気弱そうなエドモンドを夫に選んだことは、二人を知る人たちに大いに驚かれていたものだ。

 中には、「レミリアはエドモンドに弱みを握られているのではないか」と憶測する者までいる。だが、レミリアが本当にエドモンドを愛し、彼もまたレミリアを愛しているのをアリシアは知っている。

 二人の関係はアリシアにとって憧れだ。



「ほらほらレミリアさん。アリシアさんが来たら、この前手に入れたお菓子を一緒に食べようって張り切っていたじゃないか」


「あっ、そうだったわ!」



 エドモンドに言われてレミリアはようやく力を緩め、アリシアの手を取った。



「行きましょアリシアちゃん。人気でなかなか手に入らないお菓子を買えたの」


「わあ、それは楽しみです!あ、そういえば美味しい紅茶の茶葉を持ってきたので淹れましょうか?」


「ええ、ぜひお願いするわ!アリシアちゃんが淹れたお茶って美味しいのよね」


「ふふ。今日持ってきた紅茶は、この国の王宮のお茶係がオススメしてくれたものなんです」