「このまま大人しくついてきなさい」
反論を許さないような命令口調で言ってみると、彼女はコクコクと頷き従った。何だか悪役っぽくてちょっと楽しい。
アリシアは人通りの少なそうなところまでそのまま移動して、やっと彼女を解放した。
「……ぷはっ、ななな何をするんですかあなたっ!」
「手荒な真似をしてごめんなさい。どうしても貴女と話したかったの」
「は、はい?他国のお嬢様が一介のお茶係にいったいどんなご用件で?」
彼女はオドオドしながらメガネの位置を調節し、アリシアから目をそらす。
「あ、ちゃんとわたしのこと知っているのね」
「そりゃ……カイ王子の客のことぐらい……」
「あらそうだったの。てっきり苦いお茶を出して、その反応をこっそり観察していたからかと思ったわ」
「んな……何を」
見るからに顔色が変わっている。隠し事は苦手なタイプなのだろうか。
「紅茶に混ぜたのはセンブリかしらゲンチアナかしら。それともまた他のハーブ?日に日に苦味が増していったのは、毎度わたしが表情を変えずに飲み干していたからね?」
「ででですから、何の話を……」



