第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



「このまま大人しくついてきなさい」



 反論を許さないような命令口調で言ってみると、彼女はコクコクと頷き従った。何だか悪役っぽくてちょっと楽しい。


 アリシアは人通りの少なそうなところまでそのまま移動して、やっと彼女を解放した。




「……ぷはっ、ななな何をするんですかあなたっ!」


「手荒な真似をしてごめんなさい。どうしても貴女と話したかったの」


「は、はい?他国のお嬢様が一介のお茶係にいったいどんなご用件で?」



 彼女はオドオドしながらメガネの位置を調節し、アリシアから目をそらす。



「あ、ちゃんとわたしのこと知っているのね」


「そりゃ……カイ王子の客のことぐらい……」


「あらそうだったの。てっきり苦いお茶を出して、その反応をこっそり観察していたからかと思ったわ」


「んな……何を」



 見るからに顔色が変わっている。隠し事は苦手なタイプなのだろうか。



「紅茶に混ぜたのはセンブリかしらゲンチアナかしら。それともまた他のハーブ?日に日に苦味が増していったのは、毎度わたしが表情を変えずに飲み干していたからね?」


「ででですから、何の話を……」