院長は今孤児院再建のための準備を進めており、ニーナは休みのたびにそれを手伝いに行っているのだ。


 だが今日は午後から客が来るからと昼食を食べた後は追い返されてしまい、時間ができてしまった。こうなっては、部屋で静かに本を読んでいるぐらいしかやることがないが、あいにく読んでいた小説は昨日の夜に読み終わってしまった。



(そうだ、ハーブ園に行けばアリシア様に会えるかな。会えたらまた美味しいハーブティーでも振舞ってもらおう)



 仲の良いターコイズブルーの髪の令嬢を思い浮かべ、ニーナは軽い足取りで自室を出る。

 王宮の庭園は季節に合わせて様々な花が咲き、お気に入りの場所だ。仕事の合間にこっそり休憩する一角では、そちらも休息中のデュラン王子に会えるので、その意味でも大切な場所だったりする。

 ハーブ園は、そこからまた少し奥へ行ったところにあり、近頃はアリシアにハーブティーを飲ませてもらうためそこにもよく出入りしている。

 しかし残念ながら、今日彼女はいなかった。

 温室をのぞけば、庭師であるミハイル・テニエが一人で植物の手入れを行っており、こちらの気配を感じたらしく振り返った。