ただ、一つ言えるのは──



「わたしは歓迎されていないということでしょうね」



 城などというセキュリティの厳しい場所で、外部の人間が侵入し部屋を荒らしたとは思えない。物が盗られていないことからもそれは確実だろう。

 だとしたら、犯人は城にいる人間なのは間違いなく、まさかこの嫌がらせが歓迎の証というわけではあるまい。



「カイ王子あたりに相談すべきでは?」


「そうね……でも」



 アリシアは今日一日、楽しかった時間を思い返す。



「カイ様のご厚意でここに招待して頂いて、殿下も久々の休暇でゆっくりしてらっしゃるのに、こんなことを話したら楽しい気分に水を差してしまいそうだし……。少しだけ、様子を見ましょうか」


「お嬢様がそうおっしゃるなら……」


「それにどうせ、滞在期間の半分くらいは姉様のところで過ごす予定だったでしょう?こういうことが明日以降エスカレートするようなら、適当に理由を付けて早めにそっちへ行くことだってできるわ」



 もちろんそんなのは逃げるようで癪だから極力やりたくない。だがノアに精神的負担をかけるのもいたたまれない。

 ──何とかして自力で犯人を見つけて止めさせることができないだろうか。

 アリシアは散らばった物を拾い集めながら、一人思考を巡らせるのだった。