ディアナが自分のことを好いていることに、彼自身も間違いなく気がついているだろう。

 その上で、婚約者のアリシアがいる前でもディアナに優しく接するのは、ディアナが『友好国の王女』という立場だからか。それとも、イルヴィスの方にもディアナに対し特別な感情があるからなのか。


 もし後者だとしたら、彼がアリシアを愛しているかもしれないというのは、とんでもない勘違いということになる。



(ディアナ王女の顔、まさに恋する乙女って感じね。すごく可愛い)



 イルヴィスの婚約者は自分なのだから、あまり親しくするな。そう言うのは難しいことではないかもしれない。

 けれど、昔からイルヴィスのことを慕っているディアナのことを、未だに自分の気持ちすらわかっていないようなアリシアが止めてよいとも思えなかった。



「アリシアさん」



 気を利かせてか色々と話しかけてくれるカイに向け適当に相づちを打っていると、唐突に甘やかなディアナの声に名前を呼ばれた。



「先ほどはみっともない姿を見せて申し訳ありませんでした。アリシアさんがあまりにもお綺麗な方でしたので、悔しくて」


「いえ、そんなこと……」