「イル様!お久しぶりです。ずっとずっとお会いしたいと願っておりましたわ」
キラキラと輝く蜂蜜色の瞳に、アリシアの姿は確実に映っていない。
「確か二年前に会ったきりだったな、ディアナ姫」
イルヴィスは、ずっと掴んでいたアリシアの腕をそっと離し、ディアナの方に体を向けた。
(あっ……)
何故だろうか。それがものすごく寂しくて、思わず彼の顔を見上げる。そして目に飛び込んできたのは、彼の優しげな表情だった。
よく彼が冷酷な人物だと思われてしまう原因の一つに、全てを見透かすような鋭い目付きがある。
その目付きが完全に息を潜めて、慈愛に満ちた穏やかな色をしているのだ。
ディアナは、イルヴィスに会えて嬉しいのだということを繰り返し一生懸命に伝え続ける。そして、満足するまでしゃべったところで、ようやく存在に気がついたというようにアリシアを見た。
「あら?ところでこちらの方は?」
ようやく存在を認めてもらえたのか。
アリシアはしゃんと背筋を伸ばし、丁寧にお辞儀をした。
「お初にお目にかかります。わたしは──」
だがアリシアが名乗り終わる前に、ディアナが「ああ、わかりましたわ」と言って遮った。



