背後から、高く甘やかな女の子らしい声が聞こえてきた。
二人の名を呼ぶ声にアリシアの言葉は遮られる形となり、張っていた気持ちが一気に緩んだ。
声の主は、アリシアより少し歳下と思われる少女だった。
カイとよく似た蜂蜜色の瞳に、肩ぐらいまで伸びた茶色がかった金髪。その髪は柔らかく巻かれており、ふんわりとした色合いのドレスも相まって、まるで彼女をは妖精のように見えた。
「ディアナ」
カイが、彼女を見て優しく目を細めた。
「お帰りなさい兄さん」
「ああ。大事なく帰ってこられて良かった」
「今回は従者たちに迷惑を掛けるようなことをしていませんか?」
「そんなことよりディアナ、今日はずいぶんとめかしこんでいるな」
「露骨に話をそらしましたわね。あと、まるで普段はおめかししていないかのような言い方はおやめくださいな」
ディアナと呼ばれた少女は、頬をピンクに染め、怒った、というように膨らませた。その仕草は、同性であるアリシアの目から見てもかなり可愛い。
ディアナは、今度はこちらを──というかイルヴィスの方を見て、にっこりと幸せそうな笑顔を見せた。



