何とか上手く話を変えようと考えを巡らせているうちに、ニーナが楽しそうに言った。
「まあ、きっとイルヴィス殿下関係だろうと察しはついていますが」
「えっ、どうしてわかっ……あ」
「ふふーん、図星ですか。ハーブティーの香りで思い出すことだから、もしかして殿下とのティータイム中に何かあったのかな?っていう勘です。ご自分で認めてくださりありがとうございます」
「っ、やられたわね」
忘れていたが、ニーナは頭の良い少女だ。しっかり意識していないと感情がすぐ表に出てしまうアリシアにかまをかけることなど造作もないのだろう。
アリシアは大きくため息をついた。
彼のことで何日も悶々と悩んでいることは事実だ。相談するとしたら彼女が一番適任であるような気もする。
そう結論付けたアリシアは、意を決して口を開いた。
「ねえニーナさん。世の殿方は恋愛感情のない相手にキスってできるものなのかしら……その、唇に……」
「え?キス?」
「ええ。手の甲にとかなら、第二王子のロベルト殿下なんかも挨拶気分でしているようだし、あんまり気にするのもなって思っていたのだけど……。一瞬ではあったけど唇にっていうのは……初めてだったし……」
話している間にもだんだん顔が熱くなってくる。