第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



 アリシアはそう言って、またガックリと項垂れる。


 それを見て少し困ったイルヴィスは、髪を耳にかけながら件の出来事を思い返す。


 初めて直に触れた海を満喫し浜辺に戻ろうとした彼女は、かなり慎重に足を進めているように見えた。が、どうもその様子が危なっかしく、目が離せなかった。

 ……そしてやはりと言うべきか、アリシアは目の前で砂に足を取られてよろけた。

 そんな彼女にイルヴィスが思わず手を伸ばしたのは言うまでもない。だが、それでは受け止められずに、結果的に巻き込まれて一緒に転ぶ羽目になったのだった。


 覆い被さるように倒れてきた彼女はそう重くないものの、上手く身動きがとれなかった。その上、当の本人は状況が飲み込めていないのか、キョトンとした顔でまっすぐ見つめてくる。

 日の光が水滴に反射してキラキラと輝く彼女と見つめ合ううちに、自然と目に入ってくる柔らかな彼女の唇を奪ってやりたいという強い衝動に駆られたりもしたが、顔をそらして何とか耐えた。

 ──もし欲に負けて唇を奪ったりして、またこの間のように「なかったこと」にされてはたまらない。