カイが黙ってしまうと、何となく気まずい空気が部屋に流れた。婚約者の前で他の男から告白されたのだから、まあ当然だろうか。
アリシアは一つ咳払いをして、無理やり話題を変える。
「ルリーマ王国、わたしも一度行ってみたいんですよね。姉からの手紙でよく話を聞くんですけど、実際に行ったことはなくて」
「ああ、確かアリシアの姉君は数年前にルリーマ王国に嫁いだという話だったな」
アリシアには腹違いの姉が二人いる。
そのうちの二番目の姉、レミリアはルリーマ王国の子爵家に嫁ぎ、あちらで暮らしているのだ。
定期的に届く姉からの手紙によれば、ルリーマはとにかく海が美しいのだという。このグランリア王国に多い、都会的で栄えた街並みは比較的少なく、その分自然が豊からしい。
「何と。我が国に興味がおありか?」
カイが嬉しそうに笑う。
「ならば一度来てみるか?俺が国に戻るタイミングで一緒に来れば良い。心より歓迎するぞ!」
「えっ!」
アリシアは目を輝かせ、「行きたいです!」と言いかけたが、ハッとしてイルヴィスを見る。
ルリーマへ行けば、その間彼と一緒にお茶の時間を過ごすことができなくなる。毎日お茶の準備をするという約束を勝手には破れない。



