訪れて何をするかまでは決まっていないが、たいていは庭師のミハイルと雑談したり、おすすめのハーブティーを教えてもらったり、単にハーブを眺めて癒されるといった感じだ。


 そして今日は、たまたま出会った、友人のニーナを誘ってプチお茶会をしている。既にイルヴィスとのティータイムを済ませた後なので、アリシアにとっては本日二度目のお茶だ。



「ええ、言ったわね」



 アリシアはニーナのティーカップに注いだのと同じお茶を自分用に注ぎながら彼女の質問に答える。



「ですよね。それであたしは『じゃあラベンダーティーを飲んでみたいです』って答えましたよね」


「そうだったわね」


「で、今あたしの目の前にあるこのお茶は何ですか?」


「カモミールティーよ」


「いや何故!?」



 アリシアはティーカップを持ち上げ香りをかぐ。優しくて良い香りだ。



「カモミールティーも美味しいわよ」


「いや知ってますけど、あたしが言いたいのは──」



 ニーナはバンっとテーブルを叩く。その振動でカップの中のカモミールティーが零れそうなほど波打った。



「どうしてわざわざ、一度淹れたラベンダーティーを捨てて、カモミールティーに変えたのかってことです!」