「呼び捨てにしてもらっても良いのだがな……まあいいか。何故この国に来たのか、という話だったな。それはもちろん、婚約が決まった幼馴染みを冷やかし……ではなく、祝福しにきたんだ!」
「へえ。王子が直々に」
「ああ、大切な幼馴染みだから直接祝いたくてな!」
手紙で済ますわけでも使者を遣るわけでもなく、本人が。本当に仲が良いんだ。
少し感動を覚えるアリシアの隣で、イルヴィスは冷ややかに言う。
「どうせそれを理由にして、この国で遊びたかっただけだろ」
「さすがは俺の幼馴染み!お見通しか」
……いや、ただ遊びに来ただけらしい。
なんだかんだ理由を付けて少ない従者と共にこの国へ遊びに来ていた。その従者の目からも隙を見て逃れ、一人で気ままに観光を楽しんでいたそうだ。
だが一つの誤算は、金を全て従者に預けていたため、空腹になっても食べ物を買うことができなかった。しかも気がついたら倒れていた。
芝居っ気たっぷりに語る彼の話をまとめるとこんな感じだ。
「しかし!そのとき俺は天使に出会った!倒れていた俺を介抱し、食事を振舞ってくれた美しい女性。……そう、俺は一目で彼女に恋をしてしまったんだっ!」
「こ、こい!?」



