その後、船は無事に港へ戻ってきた。

 朝に庭園で気絶させられてから、いったいどれだけ時間が経ったのだろう。日はすっかり傾いて、夕焼けの赤い光が海を染め上げている。


 長時間揺れる船の上にいたからか、地上に上がると何だか違和感がある。



「あ……」



 ちょうど、拘束されたまま連れられていくカーラと、あの船の船員たちの姿が見え、アリシアは小さく声を上げた。

 カーラの表情にはもはや生気がない。無抵抗に連行される様子を見ていると、母親のことやお茶のことを楽しそうに話していた時の彼女が思い出されて、胸の辺りがキュッと痛む。


 ふと視線を横に向けると、ディアナも複雑そうな表情をしてカーラの方を見ていた。


 昔からずっと、ディアナに美味しいお茶を淹れていた彼女。いつも身近にいて、特に信頼できる存在だったのだろう。


 ディアナが恨めしい異母妹であるという事実を偶然知ってしまったが故に、今回の出来事は起こった。もしカーラが国王夫妻の会話を聞くことさえなければ、きっとこれからも、何事もなく二人の微笑ましい関係は続いていたはずだ。