それはそうだ。もちろんアリシアとしても、そのことを許すつもりはない。
しかしそれでも──
「それでも、ディアナ王女があそこで手を伸ばしてくれなかったら、わたしは今ここにいなかったかもしれません。貴女はわたしを助けてくれた。それは事実です」
「ですけど……」
「あそこでわたしを見捨てることもできた。わたしを見捨て、貴女の前から消えれば、それで貴女は当初の目的を達成できたことになったのでは?」
「……つい、反射的にですわ。さすがに目の前で溺れられても気分が悪いですし」
ディアナはごにょごにょと決まり悪そうに言う。
「それにあの、アリシアさんは私を助けようとしてくれたのに、私は見捨てるというのも違うかな、と……」
アリシアはディアナの横に並び、同じように海を見る。
つい先ほどまで捕らえられていた船には、カイの連れてきた家来たちが何人か乗り込み、カーラと船の乗組員たちを拘束している。
「そうですわ、ずっと言おうと思っていたのですが、『ディアナ王女』という呼び方はそろそろやめて頂けませんか」
ディアナが思い出したように、目を合わせないまま言った。
「私が本当の王女ではないと知っているのにそう呼び続けられるのは、あまり愉快ではありません」



