「殿下、震えていますよ」
「当たり前だ!私がどれだけ心配したと思っている」
すっかり落ち着きを取り戻したアリシアがクスリと笑うと、強い口調で責めるように言われた。
「もしあの時ディアナがいなかったら、あのまま海に落ちるところだったんだ」
「本当ですね。走馬灯が見えかけました……あっ」
アリシアはイルヴィスの体をそっと押し、自分を抱きしめているその腕を解く。
何故かイルヴィスには少し不服そうな顔をされたが、気にせず周囲を見渡す。
探していた人物は、何の表情も浮かべず、まっすぐ海をみていた。
「ディアナ王女」
アリシアは声をかけ、彼女の方へ歩み寄る。
ディアナはアリシアのことを一瞥して、また海の方を見た。
「ディアナ王女、先ほどは助けてくださってありがとうございました」
「ありがとうって……本気で言っているんですの?」
深く頭を下げるアリシアに、ディアナは面食らったように言う。
「わたしが貴女を誘拐しようと企てたりしなければ、そもそも命の危険に晒されるなんてこともありませんでしたのよ?」
責められこそしても、お礼を言われる筋合いはない。彼女はそう言い放つ。



