「くそ、こっちの船もハズレか」



 深い海を思わせるほど真っ青なその髪を、カイは苛立たしげに掻きむしる。


 少しでも怪しげな船を見つけたら、数人の家来が乗り込み調査をする。もう何度繰り返しただろうか。

 彼のように感情を表に出してこそいないが、イルヴィスにもカイの気持ちは痛いほど共感できる。



「やはり『怪しげな船』などと漠然と選ぶくらいなら、全ての船を片っ端から調べた方が良かっただろうか」


「港から出る全ての船を調べていたら時間がかかりすぎる。そんなことをしている間に本当に探している船は逃げてしまうかもしれない。……そう言ったのはお前だぞ、カイ」


「それはそうだが……」


「捜索用の船はいくつも出しているんだろ?そのどれかが既に見つけているかもしれない」


「……悪いが、俺はそんなに楽観的になれない」



 自分だって全く楽観的になれてやしない。

 そう言い返すこともできたが、二人いる王子が両方とも苛立っていたら、他の者たちに気を使わせ、空気が悪くなるのは見えている。


 イルヴィスは胸の辺りに手をやり、深く息を吐きながら、ふと遠くに目をやった。