「お茶を三人分ですか?」


「はい。お客様が一人いらっしゃっているのでそうするようにと殿下が」



 ニーナとお茶をしたり旅人の青年を助けたりと、何かと充実した時間を送ったその翌日。
 いつものようにお茶の準備に取り掛かろうとしていたアリシアに、イルヴィスの側近がそう伝えた。



「わかりました。でも、お客様がお見えなら、わたしは邪魔しない方が良いのでは?」



 客の数は一人だというのにお茶は三人分ということは、多分一つはアリシアの分なのだろう。

 そう思い首を傾げると、側近の彼は笑顔で言った。



「殿下はアリシア様にも同席してもらいたいようです。さしずめ貴女のことを自慢……もとい紹介したいのでしょう」


「ああ、そういうことなら」



 アリシアは了承して側近の彼に会釈する。

 そして、彼が立ち去った後に、肝心の客が誰なのか聞いていないことに気がついた。



(うーん、ほとんどの有力家には直接挨拶をして認知してもらったはずだし……となると殿下と個人的付き合いがある人、とかかしら)



 アリシアは気合いを入れて、今度こそお茶の準備を始める。