「変わった、か。褒め言葉だと受け取っておこう」
「はは、実際に褒めているつもりだ。……ではそうだな、俺とお前も同行できるよう話をつけてくる」
そう言ってカイは踵をかえす。
だが、その足は走り出す前に、一人のメイドがおずおずと話しかけて来たことによって止められた。
そのメイドの顔色は、ずいぶんと悪い。
「あの、カイ殿下……。少し、お耳に入れておきたいことがありまして」
「何だ、急ぎか?」
「っ……はい」
顔色の悪いメイドは、うつむき加減で「実は……」と話し出した。
声が小さく、彼女の声が直接は聞こえなかったが、カイがすぐに驚いた声を上げたので、内容はすぐにわかった。
「何っ!?ディアナに頼まれてアリシア殿を庭に呼び出した?何故だ!?」
コクコクとうなずく顔色の悪いメイドに、カイは感情的に詰め寄ろうとするので、イルヴィスはポンとカイの方をたたく。
「カイ、彼女が怯えている」
それから、極力穏やかな声で尋ねた。
「詳しく聞かせてもらえるか?」
「は、はい……」
少しだけ落ち着きを取り戻したらしい彼女は、それでも少し震えながら話す。



