「えっ、ちょっ……」


「美しい人だ!」



 彼は感動したように目を輝かせる。



「容姿はさることながら、心まで清らかで美しい……!ここまで美しい女性に出会ったのは初めてだ!」


「えっと……美しい?」


「ああ!空腹に倒れている見ず知らずの旅人に食事を振る舞い、その上楽しませようとする気遣いまである。この心意気を美しいと言わずして何と言う!」



 グっと拳を握って力説する青年。どうやらものすごく褒めてくれているようだ。



「ええっと、ありがとう……?」


「礼を言うのはこちらだ。本当にありがとう!貴女に出会えたというそれだけで、この旅は素晴らしいものとなったよ!」


「ど、どういたしまして」



 彼は何やらずいぶんとユニークな性格をしているらしい。どう対応するのが正解なのかよくわからない。



 ──それから一時間ほど、青年は色々な話をし、事あるごとにアリシアを褒め称えるというのを繰り返した。


 彼はこの国の人間ではないらしく、面白い話がたくさん聞けた。それは良いのだが、あまりに「美しい」だの「麗しい」だの褒められるので、その都度どう反応するべきか困らされた。



「何と、もうこんな時間か」