第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



 アリシアは静かな口調で、顔を前に向けたままディアナに語りかける。



「だけど……わたしも、彼のことが好きなんです」



 ディアナは怒ったり口を挟んだりせず、静かに聞いている。



「だから正直、殿下が貴女と仲良くしているのを見るのはすごく嫌だった。それに、カイ様を含め三人が昔からお互いを知っている、というのがとてもうらやましかったです」


「……」


「……って、そんな話どうでもいいですよね。ごめんなさい」


「私だって──」



 先ほどよりもずいぶんと力の抜けた穏やかな声で、ディアナはまた口を開く。



「私だって、イル様のことで知らないことはまだまだたくさんあります。例えば貴女とのことだってそう」


「わたし?」


「婚約者ができたイル様に会うのは今回が一度目ですのよ?その婚約者のことをイル様がどれだけ大切にしているのか……なんて想像のしようがありませんでしたもの」



 はあっとため息をつき、彼女は「それに……」と続ける。



「イル様だって、私について知らないことはたくさんあります……いえ、むしろ本当の私については一切ご存知ない……」


「本当のディアナ王女……」