アリシアは静かな口調で、顔を前に向けたままディアナに語りかける。
「だけど……わたしも、彼のことが好きなんです」
ディアナは怒ったり口を挟んだりせず、静かに聞いている。
「だから正直、殿下が貴女と仲良くしているのを見るのはすごく嫌だった。それに、カイ様を含め三人が昔からお互いを知っている、というのがとてもうらやましかったです」
「……」
「……って、そんな話どうでもいいですよね。ごめんなさい」
「私だって──」
先ほどよりもずいぶんと力の抜けた穏やかな声で、ディアナはまた口を開く。
「私だって、イル様のことで知らないことはまだまだたくさんあります。例えば貴女とのことだってそう」
「わたし?」
「婚約者ができたイル様に会うのは今回が一度目ですのよ?その婚約者のことをイル様がどれだけ大切にしているのか……なんて想像のしようがありませんでしたもの」
はあっとため息をつき、彼女は「それに……」と続ける。
「イル様だって、私について知らないことはたくさんあります……いえ、むしろ本当の私については一切ご存知ない……」
「本当のディアナ王女……」



