しかし、呼びかけた彼女の名前が、アリシアの口から最後まで発せられることはなかった。
強い力で、誰かがアリシアの手を後ろから引いた。
突然の出来事を理解する間もなく、嗅いだことのないような、甘ったるくて胸焼けのしそうな香りが嗅覚を刺激した。それと同時に、何か布のような柔らかいものに口を覆われる。
「ん……!んんっ」
驚いて声を上げようとすると、口元をさらに強く布のようなものを押さえつけられた。
どうにか抵抗しようと暴れたせいで、息苦しくなり、思わず甘ったるい匂いをいっぱいに吸い込んでしまう。と、同時に意識が一気に遠のいていく。
意識が完全になくなる直前、こちらを振り返り笑みを浮かべるディアナが、遠くに見えた気がした。



