「そこに置いてあった紅茶、昨晩ディアナ王女が持って来られたものですよね。ですが彼女自身の姿がありませんでしたし、怪しいと思って調べさせてもらいました」
わずかに残った香りや、この城に勤める薬師から話を聞き、紅茶に混ぜられたものが何なのかわかりました。従者はそう言いながら開いた本の一部を指さした。
「この国の、王都よりさらに南部の地域が原産の植物ですね。これの葉を乾燥させたものだろうと。保管していた瓶の中からかなり量が減っていると、薬師も言っていましたし」
「毒なのか?……確かディアナは媚薬だと言っていたが」
「確かに媚薬のような効果もあります。ただ免疫のない人間が飲むと、昨夜の殿下のように、頭痛や高熱、寒気といった強めの副作用が出るんです。……それよりまさかと思いますが、媚薬と聞いた上で飲んだわけではありませんよね?」
「当たり前だ。普通の紅茶だと思って飲まされたんだ」
従者を再び睨みつけると、今回は素直に「申し訳ありません」と謝罪された。
「はあ……しかし酷い目に遭った」
「ええ。ですが、この植物は薬師が多く所持していたことからもわかるよう、それこそ媚薬や他の薬の原料にもなるものです。もちろんその際煮詰めたり他のものと調合することで毒素は抜かれますが、その毒で人が死んだという例も聞きません」



