「ディアナ……この、紅茶に、何を……混ぜた……?」



 苦しそうに息をしながら、イルヴィスは疑いの目をこちらへ向ける。

 すぐさま疑われるとは思わなかったが、ディアナは落ち着いて立ち上がり、ゆっくり彼に近づく。



「媚薬です」


「は……」


「紅茶に混ぜたもの。媚薬です」



 いつもの紅茶に混ぜれば味でバレてしまう。だからわざわざ、スパイスの味が強い紅茶を用意させた。

 どのような味であろうと、紅茶は頼めば簡単に用意してもらえるが、薬の方はなかなか苦労した。

 薬師に「媚薬をくれ」など言えるわけがないのだから、自力で調達するしかない。

 そこでまず、王宮図書室から本を持ち出して調べ物をするところなら始まった。

 いくつか媚薬の成分が入った薬草に目星を付けて、薬師のいない間を見計らって王宮内にある研究室へ忍び込む。幸い、乾燥させた薬草の入った瓶は丁寧にラベリングされていて、目当ての物はすぐに見つけることができた。

 どのくらいの量で効き目があるのかがわからず、少し多めに拝借したが、今のところバレた様子はない。

 盗み出したものを手元に置いておくことの不安もあり、今晩行動に移すと決めたのだ。